PL(パーティングライン)とは、成形品を金型から取り出すときに金型が分割される線のことを指します。
パーティングラインを正しく設定しないと、以下のような懸念が考えられます。
- 成形品が金型から抜けなくなる
- 成形品が割れたり変形したりする
- PL部分に段差やバリが発生する
本記事では、設計歴40年以上の私の視点からPL(パーティングライン)とは何か、位置を設定するポイントや注意点を解説していきます。
これから製造用の商品・部品設計をしたいと考えている人は、ぜひ本記事の内容を参考にしてください。
三上設計事務所では、プラスチック射出成形用の金型設計を請け負っています。製品開発をご検討されている企業様はぜひご相談ください。
PL(パーティングライン)とは
PL(パーティングライン)とは、金型を開いたときに上下の型が分かれる境界線のことです。
射出成形では、製品は「固定側(A側)」と「可動側(B側)」の2つの金型に挟まれて成形されますが、その 2つの金型が接するライン=割面の位置 がパーティングラインです。
PLの位置が適切に設定されていないと、製品が金型から抜けなかったり、無理な力がかかって変形してしまうなどの問題が発生します。
金型設計の際には、製品の外観や強度、離型性に配慮しながら最適なPLの位置を設定する必要があるのです。
パーティングラインとウェルドラインの違い
パーティングラインとウェルドラインの違いを、以下の表にまとめました。
| パーティングライン | ウェルドライン | |
|---|---|---|
| 発生するメカニズム | 金型の合わせ目 | 樹脂の合流点 |
| 見え方 | 凸状の線 段差 | 引っかき傷のような線 |
| 性質 | 金型構造で位置を制御する | ゲート位置や成形条件で 発生場所を調整する |
表にまとめた通り、両者は発生原因も対策のアプローチも異なります。
特に設計初心者の方が混同しやすいのが、「線を消せるかどうか」という点です。 ウェルドラインは成形条件(温度や圧力)の調整で目立たなくすることが可能ですが、PLは金型の構造上、物理的に必ず発生します。完全に消すことはできないため、「どこに配置すれば目立たないか」「後処理がしやすいか」を設計段階で計画的に決める必要があります。
逆に言えば、PLは設計者の意図でコントロールできる要素です。 成形現場でのトライ&エラー頼みになりがちなウェルドライン対策とは異なり、PLは図面を引く段階での「設計の工夫」が品質に直結します。
PL(パーティングライン)を設定するポイント
PL(パーティングライン)を設定する際のポイントは以下の2つです。
- 最外径に設定する
- ガス抜き対策を意識する
以下より、それぞれのポイントを詳しく解説します。
最外径に設定する
PL設定において最も基本的、かつ絶対に守るべき鉄則が「製品の最も太い部分(最外径)にPLを設定する」ことです。
なぜなら、最外径以外の場所にPLを設定してしまうと、金型を開く際に製品が金型内部の突起に引っかかり、取り出せなくなってしまうからです。 専門用語では、この金型の開閉だけでは成形品が取り出せない形状のことを「アンダーカット」と呼びます。
もし最外径ではない位置にあえてPLを設定しようとすれば、アンダーカットを解消するために「スライドコア(スライド)」や「傾斜ピン」といった特殊な金型構造を追加しなければなりません。 これらを追加すると、以下のようなデメリットが生じます。
- 金型製作費の高騰
構造が複雑になるため、コストが跳ね上がります。 - 品質リスクの増加
可動部が増えることで、バリの発生や故障のリスクが高まります。 - 成形サイクルの遅延
動作が増える分、1個あたりの生産時間が長くなります。
また、最外径にPLを設定することは「抜き勾配(ドラフトアングル)」を確保する上でも合理的です。 最外径を境目にして、固定側(A側)と可動側(B側)のそれぞれに向けて製品が細くなっていく形状にすれば、抵抗なくスムーズに離型できます。
特殊な意匠上の理由がない限り、「PLは製品を上から見たときの最大外周ラインに通す」のが、コストを抑えて品質を安定させるための最短ルートです。おすすめの方法というよりは、設計の定石として覚えておいてください。
ガス抜き対策を意識する
PLを設定する際は、成形時に発生するガスの排出口をどこに確保するかを最優先に検討することが重要です。
射出成形において、金型内に残った空気や樹脂から発生するガスが適切に排出されないと、製品の「焼け」や「充填不足(ショートショット)」といった外観不備、あるいは強度不足を招く恐れがあるためです。
金型の合わせ目であるPLは、物理的にガスを逃がすための「ガスベント」を設置するのに最も適した場所となります。
例えば、樹脂の流動をシミュレーションし、樹脂が最後に流れ込む「充填末端」にPLが位置するように設計すれば、そこから効率的にガスを排出することが可能になります。
このように、樹脂の流動ルートとガスの逃げ道を常に意識しながらPLを配置することが、成形不良を未然に防ぎ、製品の完成度を高めるための手法としておすすめされます。
PL(パーティングライン)を設定する際の注意点3つ
PL(パーティングライン)を設定する際の注意点は、以下の3つです。
- 意匠面にPLを設定しない
- アンダーカットを作らない
- 抜き勾配(ドラフト)を考慮する
以下より、各ポイントを詳しく解説していきます。
意匠面にPLを設定しない
製品の意匠面、つまりユーザーの目に触れる外観部分には、極力PLを設定しないように配慮する必要があります。
金型の合わせ目であるPLには、どうしても微細な段差や線状の跡、あるいはバリが発生しやすく、これらが製品の美観や高級感を損なう大きな要因となるからです。
例えば、スマートフォンケースの滑らかな背面や、家電製品の操作パネルといった目立つ場所にPLが通っていると、デザインの連続性が断たれるだけでなく、手で触れた際の感触も悪くなってしまいます。
そのため、製品の角(エッジ)にPLを合わせてラインを目立たなくさせたり、組み立て後に隠れる部品の境界線や底面に配置したりする工夫が求められます。
このように、デザイン性を最優先に考慮してPLの位置を決定することは、製品価値を高めると同時に、見栄えを良くするための二次加工の手間を省く上でもおすすめの設計手法です。
アンダーカットを作らない
PL(パーティングライン)を決める際は、金型の開閉方向に対して障害物となる「アンダーカット」が発生しない位置を選ぶことが原則です。
アンダーカットが生じると、単純に金型を開くだけでは製品を取り出すことができず、スライドコアや傾斜ピンといった特殊な金型構造を追加しなければならないためです。
これにより、金型の製作コストが跳ね上がるだけでなく、メンテナンスの手間も増えてしまいます。
例えば、側面に穴や突起がある形状の場合、その中心を横切るようにPLを設定して金型を上下(または左右)に分割できるようにすれば、複雑な機構を使わずに製品を取り出すことが可能になります。
このように、金型がスムーズに開く単純な構造を維持できるようPLを配置することは、コスト削減と生産効率の向上を図る上で非常におすすめです。
抜き勾配(ドラフト)を考慮する
PLを設定する際は、そのラインを基準として金型の開閉方向に適切な「抜き勾配」が確保できる位置を選ぶ必要があります。
樹脂は冷却固化する際に収縮して金型の凸部(コア)に強く抱きつく性質があるため、十分な勾配がないと離型時の抵抗が大きくなり、製品の変形や表面の傷(かじり)、あるいは金型破損の原因となってしまうからです。
具体的には、製品の断面が最も大きくなる「最大外径部」にPLを設定するのが基本であり、これにより金型の奥へ行くほど細くなる自然な勾配を作ることができます。
したがって、スムーズな離型を実現し、製品表面の品質を保つためにも、抜き勾配の基点として無理のない位置にPLを設定することが強くおすすめされます。
パーティングライン(PL)に関するQ&A
パーティングライン(PL)に関する、よくある質問は以下のとおりです。
- パーティングラインとバリの関係は?
- 図面でパーティングラインを指示する方法は?
以下より、それぞれの疑問を詳しく解説します。
パーティングラインとバリの関係は?
パーティングライン(PL)とバリは切っても切れない関係にあり、バリは基本的にこのPL上に発生する現象と言えます。
金型の合わせ目であるPLには、構造上どうしても微細な隙間が存在しており、成形時に高い圧力がかかった樹脂がこの隙間に流れ込んでしまうことで、薄い膜状の余計な突起(バリ)が形成されるからです。
例えば、金型の経年劣化によって合わせ面の精度が落ちたり、成形機の型締力を超える圧力で樹脂を注入したりすると、PLがわずかに開いて樹脂が漏れ出しやすくなってしまいます。
そのため、バリの発生を最小限に抑えるには、PL面の定期的なメンテナンスや適切な成形条件の管理を徹底することが、後工程での仕上げ工数を減らし、製品品質を維持する上で強くおすすめされます。
図面でパーティングラインを指示する方法は?
図面でパーティングライン(PL)を指示する際は、製品の形状ライン上の分割したい位置に一点鎖線を引き、そこに「PL」という記号を明記するのが基本です。
これは、金型設計者が設計者の意図を正確に理解し、成形不良のリスクや不要なコスト発生を防ぐために欠かせない情報伝達です。
具体的には、製品の外形線上の該当箇所に一点鎖線を描き、引き出し線を用いて「PL」と記入して位置を特定します。
形状が複雑で平面図だけでは伝わりにくい場合は、断面図を併用してPLの正確な位置や抜き勾配の方向を補足することもあります。
このように、誰が見ても誤解のないよう図面にPLを明記しておくことは、後工程との連携をスムーズにし、手戻りを防ぐためにもおすすめの手法です。
まとめ:パーティングラインとは金型を開いたときの境界線
ここまで、PL(パーティングライン)とは何か、設定するポイントや注意点を解説してきました。
パーティングライン(PL)は、単に金型が分かれる位置を示す線というだけでなく、成形品の品質やコストを左右する極めて重要な設計要素です。
意匠面を避けて目立たない位置にPLを設定すれば後加工の手間を省けますし、単純な開閉で済む位置にすれば金型コストを抑えることができます。
このように、製品のデザインだけでなく、成形時のトラブル回避や生産効率までを考慮してPLを決定することが、トータルコストを抑えた良質な製品作りには強くおすすめされます。
三上設計事務所では、プラスチック射出成形用の金型設計を請け負っています。
家庭用品・自動車部品・工業製品・家電などの金型設計を40年以上にわたり手がけているので、製品開発をご検討されている企業様はぜひご相談ください。

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